ペンタックスが13:30に決算短信と中期経営計画を発表。しかし11:00に「通期業績予想の修正に関するお知らせ」を発表しており、その数値が決算短信と全く同じ。決算の締めや分析なんてだいぶ前に終わっているはずだし、着地点なんて月次で見込をやっていれば決算を締める前に何が要因で数字がブレるかなんて分かっているはず。ちょっと行儀が悪い(時間差がほとんどなく業績予想の修正と決算短信を出す会社もあるが)。

ざっと読んで気になったところは以下の通り。

敵対的買収に伴い企業価値が損なわれるリスク
企業の将来的な価値を毀損するような企業買収に対して、事前防衛策として信託型ライツプランを導入しておりますが、実際に敵対的買収が行われた場合には、当グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

ちょっと笑ってしまった。1年前の決算短信では4番目に挙がっていたが、中間決算短信では削除。それが今回の決算短信では9番目(一番下)に復活。平成18年12月21日にHOYAとの経営統合の発表があったから、多分、中間決算の頃には水面下でいろいろと会話がされていたんじゃないだろうか。現経営陣にしてみれば復活して当然なんだろうが、それでも一番下に持ってきているのはそれなりにHOYAに配慮しているのかもしれない。

目標とする経営指標
営業利益率 8%

かなり目標が低いんじゃないだろうか。今回の決算では3.6%。しかも2010年3月期の営業利益率が5.8%であり、ずいぶんとのんびりした計画である。それと成長に関する目標値が無い。株主は不満だろうな。

B/Sの変化

利益剰余金が2928百万円の増加なのに対し、現金預金は11050百万円の増加。その要因は仕入債務+8869百万円、短期借入金+1426百万円、長期借入金+4066百万円、棚卸資産+5321百万円。借入金の増加はいいとして、仕入債務と棚卸資産の増加が気になる。売上債権は+1326百万円。売上は+15133百万円、売上原価は+11325百万円なので、ボリュームが増えているのはいいが、バランスが取れてない。仕入債務のサイトなんてそうそう変えられるものではないから、期末になって商品を大量に作ったってこと?それって売り切ることができるの?
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P/Lの変化

連結では対前年で売上総利益率が減少。しかし営業利益率は改善。販管費のうち、人件費、研究開発費を抑制したのが営業利益率改善の要因かと思う。
連結・単体の比較では売上総利益にかなりの差異がある。しかし営業利益では差異が無くなっている。連結各社の数字や連結調整を見ないとなんとも言えないが、子会社のコストの発生源を生産子会社=売上原価、販売子会社=販管費とした場合、生産子会社が頑張っているってことか。少なくとも単体の損益構造と違う子会社が多いってことは言えそう。とりあえずコストカットする場所は販管費かな?
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受取手形割引高

1667百万円。運転資金を確保するため割り引いているのか?ちなみに支払利息は1906百万円。ほとんどこれか?

平成19年3月28日締結のコミットメントライン契約に は、純資産の部の金額を前期比75%以上でかつ連結貸借対照表で 29,600百万円以上、貸借対照表で30,600百万円以上に維持すること、及び経常損益が連結損益計算書・損益計算書とも2期連続して損失にならないようにするという財務制限条項が付されています。

こういった制限条項が5つある。制限条項がついているってことは、貸し主はそれなりに不安ということだろう。収益性に問題あり?

事業部別損益

ライフケア事業は規模は拡大したがマージン率(M率)の低下により対前年で減益。イメージングシステム事業は規模の拡大よりもM率の改善による増益。オプティカルコンポーネント事業が規模、M率ともにマイナス。利益率の高いライフケア事業に注力するのもうなずける。オプティカルコンポーネント事業は利益率の改善が課題となりそうだ。
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中期経営計画

前回の中期経営計画は売上高、営業利益ともに一度も計画未達。計画通りなら今回の決算で目標とする営業利益率8%を達成しているはずだが、結果は遙か遠くおよばない。そもそもスタート時点でつまづいているし、営業利益率も悪化。

何でつまづいたのかと2005年3月期の決算説明資料をチェックすると、ライフケア事業、イメージングシステム事業のようだ。特にイメージングシステム事業が悪い。またこのときに中期経営計画値を下方修正(何で今回の説明会では修正前の数字を使ったんだ?)。しかし修正後の数値もかなり強気で、結局2006年の売上高以外は修正後でも未達。

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2007〜2009年中期計画は、売上高は現実味のある数字だが、営業利益はかなり強気なのでは?ライフケア事業で営業利益を稼ぐようだ。

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会社は決算短信で「既存の3事業に集中し、研究開発ではライフケア事業に重点を置く」と述べており、また中期経営計画には「約20件の開発・事業化案件の整理を着手済み」と述べている。とりあえず本業回帰ってことか。しかし開発・事業化案件の整理ってなー。これは勝手な想像だが、会社を成長させていくには開発や新規事業をやらなければいけないってことで色々と手を出してはみたものの、それほど本気ではなかったので、今回の件をきっかけに整理したってところではないだろうか。本気だったり本当に必要だったら続けているもんな。現社長だけでなく、前社長も同罪だな。この件で一番迷惑を被っているのは現場の人間。心からお見舞い申し上げます。

斜に構えて見ているせいもあるだろうが、なんかぱっとしない実績と計画である。その改善策としてHOYAとの合併の話があったんだと思うんだけど、HOYAとの合併に比べれば、今回の中期経営計画は魅力的に見えない。ペンタックスの株主からすると、やはりHOYAとの合併を支持するんじゃないかな(合併比率にかなりの不満があったみたいだが)。

それからロイターの記事でこんなのが。

本日発表の中計は単独案にならざるをえない=ペンタックス取締役

もう合併をする気はさらさら無いって雰囲気がプンプンと感じられる。

それと上場について疑問に思っているみたいだけど、この三橋信一郎取締役を有報で調べてみたら日本勧業銀行(現みずほ)出身で、ハートエージェンシーという、会社概要を見る限りみずほグループの天下り企業としか思えない会社を経由して平成17年6月にペンタックスの常務取締役になってる。しっかりと上場企業に就職しているのに上場に疑問を呈するなんてなかなか面白い人だ。ペンタックスが非上場だったら来てたんだろうか?それに上場してなくてもM&Aはあるし、何を言っているんだか。「IRなど上場に関連した業務量の多さが負担」というのは分かるけど、それでもちゃんと回している企業だってあるんだから、これはスタッフ部門の効率性の悪さを露呈しているだけでは?

うーん、ペンタックスが回復するには、現経営陣を総取っ替えしないと無理なような気がしてきた。逆にこの経営陣をHOYAに迎え入れたら、HOYAはダメになっちゃうんじゃないだろうかという不安も。