去年の講演会の時にメモしたのを見つけたので、備忘録としてブログに残します。去年の講演なので、今は状況が変わっているかもしれません。また、私が間違ってノートに記録した可能性もありますので、その辺はご了承願います。



【うつ病 どう理解し、どう治すか 野村総一郎】

書籍

  • うつ病をなおす
  • うつに陥っているあなたへ
  • 心の悩みの精神医学
  • 精神科にできること

うつ病、昨今の動き

  • うつ病による受診増→1年で2倍に
  • 自殺も増加(7割がうつ)。
  • 長期欠勤の背景にうつがある。→7割がうつによるもの。企業統計で1位。
  • うつの定義が変わったことにより、うつの患者が増えた→アメリカの考え方が標準となっており、うつにもいろいろなタイプがある。
  • 新たな治療薬の登場
  • 治りにくいタイプへの対策
  • うつ病にリハビリ
  軽症うつ状態→うつ病 ×→ 病体 ×→ 自殺
  [           A          ]        [B]        [C]

  [A]うつ病に悩む人々。家族、職場、地域でどう対応し、支援し、啓発するか
  [B]→[C] 再発防止をどうするか

  [A]→[B]、[B]→[C]の段階で防ぐ

生涯有病率 平均7%

20〜34才9%
35〜44才5.5%
45〜54才7.8%
55〜64才7%
65〜3.6%

うつの定義が広がったため、割合が高くなっている。(厚生労働省 2003年)

20年くらい前からうつ病の概念が変わった

 ドイツ流(事実を積み重ねる学問的考え)
  ↓
 アメリカ流(あらかじめ定義を定める実際的な考え)

過去のうつ病の定義

  • 症状、重症度?
  • 躁状態があるか?
  • 経過が良好?繰り返す?
  • 社会適応の良い人?
  • 几帳面な性格?
  • 心理的誘因の有無?

→うつの定義が不明確

下記のうち5つ以上がほぼ毎日、2週間以上続くとうつと診断

  • ゆううつ気分
  • やることに興味、喜びがない
  • 不眠
  • 食欲不振
  • ひどく動きが減った、ひどくイラつく
  • 自分に価値がない、ひどく罪の意識がある
  • 考えが進まない、物事が決められない
  • 死にたい

→これらにより苦しんでいる。仕事、社会生活に支障。
→薬物やアルコールの影響ではない。
→死別によらない。

躁状態

  • 気分が非常に高揚する
  • 怒りっぽい状態が1週間続く
    →多弁、浪費、寝る必要なし、話しが飛ぶ、注意散漫、提案やアイデアがどんどん出てくる、など
  • 仕事、対人関係に著しい支障、他人への迷惑、自分の信用をなくす→うつへつながる(前段階)

うつのタイプと効く薬

タイプ 抗うつ薬 感情調整薬
メランコリー よい 不要
双極性 悪い よい
気分変調 悪い 悪い
非定型うつ病 悪い 悪い

うつの治療、再発予防、いずれにも有効なのは

  • 生活上のアドバイス
  • 周囲の理解と協力
  • 精神療法(心理療法、カウンセリング)
  • リハビリ(職場復帰のための)

生活アドバイスと周囲の対応法

  • うつへの知識を持つ
  • 医学で治せる部分が大きいことを知る
  • 抗うつ薬の知識を持つ
  • 効果がないようでも、やさしくなぐさめる
  • 説教しない、根性論を展開しない
  • あせることのない、ゆったりした対応
  • 気晴らしをすすめる→カラオケ、旅行はダメ(これらは健康な人の場合)
  • 自殺には注意。特に治りかけのとき。衝動的に行う。
  • うつの人は人に会いたくない

19種類(抗うつ薬)

  • 安全性が高い
  • 副作用で飲みづらい
  • 標準的な使用方法がある
  • 現在の世界的主流はSSRI

問題点、弱点

  • 有効率は70%
  • 副作用がある
  • 即効性はない
  • まれにイラつきが出る(特に若い人)
  • 急に止めると不安などがある
  • 妊娠の可能性があれば注意(ほとんど危険性はない)

医者(薬物療法のうまい医者)

  • 標準治療法を知っている
  • 副作用とその対策を知っている
  • 薬の種類を少なくしようとする(最初は1種類)
  • 複数の薬を使うときは理由を説明できる
  • 薬のちょっと出しはしない(十分な量を使う)
  • 薬の飲み心地をいつも聞く(薬との相性)

認知療法→日本人に合わないのではないか

うつ病からの回復
 不安、いらいら→おっくう

半年で50%の人が治る

  • 1年で65%
  • 2年で80%
  • 3年で85%
  • 54ヶ月で100%

具体的な復職の目安

  • 本人が復職への意欲がある
  • 通勤がきちんと安全に可能
  • 規程勤務時間での就労可能
  • 業務に必要な作業をこなせる
  • 仕事による疲労を翌日までに回復できる
  • 睡眠覚醒リズムが整っている
  • 日中眠気なし
  • 少なくとも社会人としての人間関係を保持できる
       (ちょっとした挨拶でもダメになるケースがある)

  →1つ欠けても、復職はやや困難かもしれない

予防

  • 薬はしばらく続ける(半年)
  • 同じ状況を繰り返さない(過去に学ぶ)
  • 自分の考え方のパターンに気づく
  • 無理をしない
  • 限界を知る
  • 自負心を切り下げる
  • こだわりを捨てる
  • 迷惑をかけないのなら、自分のペースを重んじる

質疑応答から

配偶者の性格による影響は大きい
 →ワーワー言う人だと治りが悪い(言っていることが正論でも)

民間療法は効果があるか?
 →効くケースもある(西洋オトギリ草)。しかし因果関係はつかめない。
  しかし医学を先に受けること。

うつ病と統合失調症は全く別の病気
 うつ→統合失調症になることはない
 統合失調症→うつのケースはある(合併症)

子供のうつは増えている
 →アメリカの基準を適用したため

登校拒否=うつではない
 →いろんな要因があるため

男性の更年期についてはほとんど研究されていない

ステロイドを長く飲むとうつ病になりやすい
 →抗うつ薬で治ったり軽減される